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ドラゴンは『ビクッ!』と身体を動かすと、『ドスン』と一歩後ろへと下がった。そして大きな瞳をパチパチと瞬きさせている。
(えっ? 恐がってんのか、こいつ……)
アストはドラゴンの行動に戸惑いながらも、もう一度質問をする。
「おまえの用件はなんだって聞いてんだよ。」
再度、睨みを利かせドラゴンに詰め寄るアスト。ドラゴンは短い前脚を必死に動かし、「グルル……グルッ…」と喉を鳴らす。
アストはドラゴンのこの様子に、(殺すんだったらとっくに攻撃してるよな? 悪いやつではなさそうだ。)とホッとするとともに……
(何かこのドラゴンは必死に伝えようとしているか、全然解らんぞ……)
……額に手をあてて頭を抱えた。
「すまねぇ、流石の俺でもドラゴンの言葉は分からねぇよ。」
「はぁ……」と溜息を漏らし顔を上げた瞬間、ドラゴンの顔が近くにあることに気が付いた。
(えっ?)
そしてドラゴンの唇が自分の唇に触れたことにアストは気がついた。
「なっ!」
(俺に、こいつ触れてやがる!?)
アストは初めて触れる精霊以外の物に驚いたが、まだ驚くことが起こった。それは目の前にいたドラゴンが耳の尖ったエルフの姿に変わったからだった。
彼の体つきとは自分と全く違い、筋骨は逞しく雄々しい漢そのものであった。(もちろん服は着ていない。)
アストは目のやり場に困りながら、今目の前で様々に起こったことを脳で処理していると、エルフ姿のドラゴンはウェーブのかかった長い髪を耳へとかけ、アストの手を取り跪いた。
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