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(お、夫? 殺せる?)
次はアストが瞬きが、増える番だった。
彼は必死に考えを巡らせる。
このドラゴンが『夫』とと言うことは、彼自身は『嫁』と認識することとなるわけで、自分をオスだと認識してきた彼にとっては到底納得出来るはずもなく、
また、『殺せる』と言う言葉に対しては触れることが出来れば自分などいとも簡単にこのドラゴンであれば、殺すことが可能だろうと理解できた。
だが、しかし!
『夫が嫁を唯一殺せる?』と言う摩訶不思議な関係性を理解できないアストは、ドラゴンに向かって
「ちょっと、ちょっと、待てよ……」
と、言って額に拳を当てた。
「その伝承なら、おまえと俺は、夫婦の関係になると言うことか?」
「あぁ、そうだ。」
「俺は、男だぞ?」
アストはそう言いながら昔、植物であった頃、自分が雌雄の両方の性を持っていたことを思い出していたが、『男』となれば、このドラゴンがここから居なくなるのではと思い、そう言い放った。
しかし……
「あぁ。だがしかし伝承にそう書いてあるならば、貴方を嫁として娶るしかない。」
ドラゴンは、引くことはなかった。
(……しかないってなんだよ!俺の意思はどこにあんだよ!)
訳がわからない状況にアストは更に苛立った。
「もう伝承、伝承って、うるせぇな!
どこに描いてある伝承なんだよ!? 俺はそんな伝承を許可した覚えは無い。 差し詰めどこかの石盤とかに書いてあったんだろ? ちょっとそれ、持ってこいよ。 今すぐに!」
アストは額にかかる髪を掻き上げながらをエルフ姿のドラゴンに指示を飛ばした。
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