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彼は「ふぅ……」と溜息を吐くと「分かった」とアストの瞳を、熱を帯びた眼で見つめる。
そして、アストの両肩をガシッと掴んだ。
「な、なんだよ!」
睨み付けるアストを気にせず「龍に戻るため」と言って彼は唇を近づけた。
熱い唇が触れたかと思うと、バチバチと音を立ててエルフ姿の男は、巨大な黒いドラゴンへと変身した。
二人が話し合っている間に旭は昇り、ドラゴンの鱗にその光がぶつかり、宝石のように彼を煌めかせる。
ドラゴンは、太陽に向かい体を動かした。次いで彼は振り返り、アストを見つめ「グルッ!」と一声上げる。
それはまるで「待ってろ」と言っているようで、
アストは腕組みをしたままドラゴンを睨み付けた。
「おう、ちゃんと持ってこいよ!」
ーーバサリ、バサリ!
ドラゴンは大きな翼を両方開くと、崖から海へ落ちるよう飛び立ち、海原を飛んでゆく。
「……ふぅー、行った行った……」
アストは眩しい旭を遮るように額に手をかざし、ドラゴンが飛ぶ様子を見つめている。
(とりあえず消えた!)と安心しているたがーー
次の瞬間、アストは「いっ!!?」と驚愕の声を発した。
その理由は飛んでいたドラゴンの身体が傾き、豪快に飛沫をあげ、大海に落下したからであった。
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