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人魚は海に顔を浸けると甲高い声を発した。声というより超音波と言ったほうが正しい。
海の水は小刻みに振動する。
近くにいるアストは耳を塞ぎ苦悶の表情だ。音の衝撃に島の鳥たちも一斉に飛び立っていく。
彼女が声を止めると、「大丈夫です!主人がすぐに来ます」と可愛らしい声でアストへと告げた。
「あ、ありがとう、 助かった。」
ビリビリとする耳から手を離しながらアストはドラゴンを見つめる。もうドラゴンは鼻先だけどなっていた。
ーーその時だった、
黒いドラゴンの身体が、水飛沫を上げて浮かび上がった。
その理由はドラゴンの体の下に、彼より倍以上の巨大な藍色の艶めく鱗を持った大蛇のような竜が姿を現したからだ。
「ゴロ〜ゴロロ〜ゴロロォ〜?」
(フィン、これでよかったかなぁ〜?)
と人魚に向かって話しかけている。
「バッチリよ! さすが私のダーリン♪」
人魚はウインクを藍色のドラゴンへと送った。
このドラゴンの名はヨルム。この海流に住むドラゴンであり、この海の主である。
ヨルムは首を動かしてアストの方に顔を向けた。
「ゴラロ〜ゴロ〜ゴロ、ロ、ゴロロ〜?」
(アスト〜お久しぶり〜背中の龍はどうしたの〜?)
アストはヨルムの言葉が分からないため、人魚のフィンが訳してくれる言葉を聞く。
フィンが訳している間に、ヨルムは背に乗ったドラゴンを頸を回して覗き込んだ。
その途端、
「!!」
ヨルムは瞳を見開き固まった。
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