1.ファンタジーはじめます!

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ーーーーーーーーーーーーーーー  絶海の孤島に1人の少年がいる。 「全然っ、着かないんだけど……」  草木が生茂る森の中で今にも泣き出しそうな声で述べる青年。  どんぐりまなこの可愛い顔の頬には多くのかすり傷があり、黒い髪は汚く爆発して、身につけている服はボロ切れのようになっている 「歩いても歩いても全然近づかない。 なんでだよ。」  彼の名前はカッサ。  カッサは、3日前に平和な村に突如やってきた異国の者に捕らえられ、奴隷として売られるために船に乗せられていた。しかしその船が嵐にあい、この孤島に打ち上げられたのだった。  それ故に彼はここはどこかも分からない。  意識が戻った時にすぐに思ったことが(お腹が空いた)と言う人間らしい感覚であり、あたりを見渡して食べ物らしい実を食べ、飢えを凌いでいたが、森の奥にお城のような建物を発見し、少しでも食料を貰おうとそこへと足を進めた。  しかし、その城は近づいたかと思うと遠ざかり、目の前にあったかと思うと背後にあったりして、陽炎のように城は彼を惑わし、一向にそこに辿り着けなかった。 「もう……無理……」  濡れた草の上であることも気にせずにカッサは倒れ込んだ。彼の瞳には涙が浮かび、その滴は地面へと流れていった。草を握りしめたが 「お父さん、お母さん……」  吐息と共にそう呼ぶと、彼は瞳を閉じた。
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