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ーーキィィ……
錆び付いた蝶番の音がして部屋の扉が開くと、彼の周りにいた精霊達は、一気に扉を開けたアストの元へと向かった。
みんな彼の頭や肩に乗ったり、服にしがみついたりして楽しそうである。
アストは精霊を身体にくっつけたまま、横たわる男の傍に胡座をかいて座った。
「よう、さっきは オウレンを虐めてくれたそうだな。」
アストの言葉に、彼は瞳を閉じたまま「私の方が虐められている。」と言葉を返した。
「そういや、お前の名はなんて言うんだ? “旭暉の龍”とか言うのは肩書きだろ?」
彼は瞳を開くと、首を回してアストの見つめた。
「 ケツァール コアトル 」
「ケツァ……? なんか舌を噛みそうな名だ。」
アストは口を大きく開けたり閉じたりして口の運動をしている。
「……母からは “ククル” と呼ばれていた。」
それを聞くと、アストは「ぷっ!」と吹き出した。
「ククルって、外見に見合わねぇ可愛い名だな。 じゃあ、ククルって呼ばせてもらうぞ。」
「あぁ、好きに してくれ……」
旭暉の龍こと、“ククル”は「はぁ、」と溜息を吐くと顔を天井に向けた。
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