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「これ、人間?」
「人間初めて見る。これ死んでる?」
カッサの耳に小さく可愛い声が届く。
微かに目を開けると人差し指をくらいの裸の小人が2人カッサの目の前で話し合っている。
2人は双子のようで、肩まで伸びる赤毛の頭には緑の柔らかい若葉がのっている。
「……ま だ、生きてる……」
カッサが空気に消えそうな言葉を発すると、2人はびっくりして「ひゃっ!!」と声を上げて彼の目の前から一瞬にして霧のように姿を消した。
(あれは一体なんだったのだろう?)
カッサは瞳を閉じて死の淵でいよいよ何か幻を見たのだろうと思った。
「ふふっ……」
そう思うとなんだか笑いが込み上げきた。もしかしたら自分は生きていると思っているが、ここは天国で、もう自分は死んでいるのかもしれない。きっと父親と母親も居るだろう。
「お父さん、お母さん、ぼく、ここだよ」
すると、カッサの体はフワリと浮いた。
温かい風に包まれているように気持ちが良くて、カッサは安心したように瞳をゆっくり閉じた。
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カッサが気を失うと、先ほどいた小人はまた現れた。小人は浮かぶ彼のお腹のところにいて、お腹から走って顔のところにゆく。
「アスト様、この人間汚い。」
1人がそう言いながら、彼の頬に付いた草を取ってそれを食べた。
「アスト様、この人間 どうする?」
もう1人はカッサの頬に付いた泥を一粒一粒指で取っては落とし、そして “アスト様” と呼んでいるお方を見つめた。
“アスト様” と呼ばれている者は、
「どうすっかな」とため息混じりに言うと頭を掻いたのだった。
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