5.最期の忠告

5/11
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「まさかここに居る奴ら皆……前世の記憶があるのか!?」  察しのいい浅井先輩が一番にそう叫んだ。三沢君はまだピンと来ていないようで、「前世の記憶?」と呟いていたが、 「それじゃあ井上さんは本当に……」 と口走った倉下さんは、口元に手を当ててうるうると瞳を潤ませていた。何だか収拾のつかない感じになりつつあるこの場を、再び柴山さんがまとめる。 「既に知っていた方とお気づきの方が居るようですが、僭越ながら私から説明させて貰うと、『上地尚親』は実在していた戦国時代の国人領主で、この井上直緒さんの前世です」  「え!?」と大きな声で驚いたのは三沢君だけだった。先輩も倉下さんも、「やっぱり」というような顔をして事実を受け止めている。  「そして皆さんの前世は……」と言うと、柴山さんは先輩の前で掌を返して、「尚親の正室の『淡雪(あわゆき)』」、次は三沢君に向けて「側室の『桔梗(ききょう)(かた)』」、倉下さんに向けて「側近の『加野通孝(かのみちたか)』ですね」と畳み掛けた。  矢継ぎ早に互いの前世が明かされて、三人は目を丸くしている。前世の記憶を持っているという事だけでも凄いのに、その記憶を共有する人物がこんなにも集まっているのだから、その反応は当然だった。しかし本題はそこじゃないと、柴山さんは更に続ける。 「皆さんの共通点を明かしたところで、私から皆さんに見せたい物があります」  テーブル上に置いてあったリモコンをピッと押すと、室内のカーテンが自動で閉まり、部屋の灯りが次々に消えた。そして柴山さんの後方天井から光が差し、私の背面の壁を四角く照らし出すと同時に、上部からスクリーンがクルクルと降り広がった。どうやらこれはプロジェクターのようだ。  柴山さんはテーブルに置いてあるノートパソコンをカチカチといじり、プロジェクターで画像を映し出す。それを見てすぐに口を開いたのは、倉下さんだった。 「これは……もしかして、家系図ですか?」 「その通り、これは家系図です。そしてここを見てください」  柴山がポインタで示したところには、『尚親』という名前があった。 「これまさか……上地家の家系図か!?」  驚きの声を上げた先輩に柴山さんは「そう」と肯定する。私達は皆、食い入るようにスクリーンを見つめた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!