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尚親の側室である桔梗の方の記憶を持つ一年下の後輩――三沢徹哉には、メールアドレスを教えてからというもの、急接近されて部活内では益々噂になってしまっている。
尚親の側近だった加野通孝の記憶を持つ会社員――倉下智実は、コンビニで助けてくれたお礼と称して、私を美味しいパンケーキのお店へ連れて行ってくれたが、前世の記憶からか、一緒に居ると時々妙な行動をとっていた。
「晶ではなく、どうして私に連絡を?」
「それは……この前ショウさんに頼ったばかりだったから、またすぐ頼るのは少し気が引けて……」
“ショウ”というのは占いをする時の名前で、本名は河津晶。ショウさんは、よく当たる前世占いとして巷で評判のタロット占い師で、私も柴山さんも、彼との初めての出会いはお客としてだった。
「それでどうしようか困っていた時に、ちょうどTVで柴山電機のCMが流れて……」
「それで私を思い出してくれたんだ?」
「はい」
「フフ。ありがとう。頼ってくれて嬉しいよ」
そう言って優しく微笑む柴山さんの表情を見上げながら、私はまた落ち着かない気持ちになった。まだ私は柴山さんの両腕に軟禁状態だ。大人の余裕からなのか、それとも私と違って人生経験が豊富だからなのか、いつも女性とはこの距離感でも平気なのだろうか。
(それとも私、子供だと思われてる?)
それが一番しっくりくる答えだったので、内心酷く落胆した。
「お腹空いてる? 夕飯食べに行こうか」
私がしょんぼりしている原因を誤解した柴山さんは、私の頭を優しく撫でて、屋上の出入り口へ向かって歩き出した。撫でられた掌の温かさを反芻しながら、「まぁいいか」と心中で呟き、私は彼の後を追うのだった――
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