メモリーフラッシュ24時

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   * * *  拘束されたままのゼロは、まだぐったりと項垂れていた。 「……ゼロ」  女がおずおずと呼びかけると、「俺の記憶を見たのか」と存外はっきりした声が返ってきた。どうやら意識は戻っているらしい。  女が答えずに無言を貫いていると、ゼロは地獄の底から這い登るような絶望と静寂と激情の声で「……見たんだな?」と尋ねてきた。 「……ええ」 「どこまで見た? 俺がさっき捕まるところまでか?」 「……ええ、そうです」 「じゃあもう、アンタ、知っているんだな? 俺が、何で捕まったのか……」 「ええ……」  女がこくりと頷くと、ゼロは緩慢な動きでノロノロと顔を上げた。その表情には、抑えきれない羞恥の(あか)が滲んでいた。  しばらく、二人とも黙ったままあさっての方向に目を向けていたが、やがてゼロが観念したように呟いた。 「……なあ、ちょっと、こっちを向いてくれないか」  女はゆっくりと首を巡らせて、ゼロのほうにそっと目を向けた。  ゼロはぐっと唇を噛み締めたあと、大きくひとつ息をついて、言った。 「アンタに、一目惚れをしてしまった……どうか、名前を教えてくれないか、可憐なお嬢さん(レディ)」  ミスター・ゼロの告白に、耳まで真っ赤になった彼女が何と答えたのかは───二人の記憶の中だけに残っている。
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