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―1―
高校時代から付き合っていた彼女と別れた。
彼女とは部活動で出会い、切磋琢磨していくうちに彼女が部長で俺が副部長。それがきっかけで付き合い始め、あっという間に大学生。個人的に仲良く付き合っていたつもりだったが、将来があるからと軽く振られてしまった。
その後、ショックで3日寝込んだりしたけれどメンタルは回復し、就活に励み晴れて社会人となった。
入社祝いの飲み会で先輩から面白いアプリが配信されたと聞いた俺は、千鳥足で終電に乗り込み、新作アプリをダウンロードしていた。
かわいい女の子と触れ合えるラブプラスのようなゲームなのだが、内蔵された優秀なAIが、まるで本物の心を持っているかのような反応をしてくれるらしい。酔っぱらった先輩の誇張もあるかもしれないけれど、容量も軽いみたいなので気軽な気持ちでダウンロードを完了させた。
アプリのチュートリアルを終えキャラ作成を完了させる頃には自宅に到着、酔いもだいぶ冷めたはずだが顔はまだ熱かった。
「準備完了、流石にこれはやりすぎたかな……」
画面の指示に従って操作すると、スマホの画面に自分が作成したしらたきと名付けた幼い女の子が表示された。自分の思い描くかわいい女の子を作ってみたけれど我ながらよく出来た気がする。ベッドに横になりゴロゴロと寝転がる、ラブプラス感覚で女の子を撫でてみると無垢な笑顔で反応してくれた。
「んんぅ……ご主人様気持ちいいですぅ……」
落ち着いた幼い声がスマホから聞こえる。動かす体をぴたりと止めて、画面の中にいる女の子の鼻先を重点的に撫でてみる。
「んゅ、そこは……くしゅん、鼻ばっかり触らないでください~」
鼻に触れている事を認識するほどには高性能ということなのか分からないが、撫でると声で反応してくれる。AIの発展が著しいとは聞くがついにここまで来たかと感心してしまう。いや、鼻を撫でた時のボイスがあるのか?
鼻ばっかり撫でるのはかわいそうなので頭を撫でてあげる。額のちょっと上あたり、多分撫でられたら気持ちいい場所を上から下へなでなで。
「ご主人様がいっぱいなでなでしてくれてしらたきは嬉しいのですー」
「そうか」
「えへへぇ」
無意識に言葉が漏れると可愛く首を傾げながら無垢な笑顔を見せてくれる。しらたきというのは昔彼女がペットに付けた名前で、昔は食べ物かよと思ったけど今になって俺もかわいいなと感じてついこの子に名付けてしまった。
顔を左右に振る仕草が頬の赤みを強調させて、つい右頬を触ってしまう。
「ふにゅ、ほっぺ、やっと触ってくれたっ」
「触っていいの?」
「うんっ! ほっぺ撫でられるの気持ちいいんだよ」
「それなら、左のほっぺも触っていい?」
「触ってくれるの? ではご主人様、気が済むまでどうぞです」
自然に会話が成立して画面の手前まで顔を近づけるしらたき。俺は両手の親指でスマホを触りくりくりと左右の頬を愛撫する、目を細め口が半開きになり、下から上へマッサージをするように撫でてあげるとぷるんっと頬が震え、にぱぁと無垢な笑顔を見せてくれた。
「ご主人様気持ちいいです!」
そう話すしらたきと目が合う。ベッドの上でスマホを宙に上げ操作しているからなんだろうか、ベッドに寝転がる俺とその上に乗るしらたきのような。このまま抱きつきたいと思ってしまった。
「しらたき、抱っこしてもいいか?」
だから口にする。無理なのはわかっているけど聞いてみたかった。
「ふぇ!? 抱っこですか? 抱っこは……ご主人様、ベッドに横になってるよね、うんうんそのまま布団被って」
言われるまま指示に従い、掛け布団の中に入る。
「そうしたら目を瞑って私の事を想像して……ぎゅっとするの」
暖かい感触がする、ぎゅーっと抱きしめる。
「ご主人様ぎゅーつよい! そうそう力緩めて……私はいつも一緒だからね……おやすみなさい」
しらたきにそう言われるままに眠りについてしまった。
きっと夢の中でもしらたきを抱いている。ぷにぷにを堪能している。
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