朝日が最期を告げる日

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日本が超高齢社会になったのは、今から約120年前のこと、だったと思う。そのさらに前から高齢化は問題視されていたのに、日本政府はなんの有効策も打ち出せなかった。 このままでは本当に日本社会が立ちいかなくなるなってしまう。 行き詰まった日本のお偉いさんは、もうどこかおかしかったんだろう。 「日本国民は、80歳になったら死ぬことにすればいい。」 とある医者だか学者だかのこの意見を、あろうことか実現してしまったのである。 当然国内からの非難反発はすごかったし、それが当たり前の時代に生まれ生きてきた僕も、少しばかりの違和感は覚える。 でもその後に、歳をとっても見た目が老いないだとか、身体機能が低下しないとか、そんなテクノロジーがその人物から発表されたり、寿命が縮まる代わりに定年退職年齢が下げられたりすると、反発は収まっていった。 もちろん人道的な点では解決は出来なかったのだけど、そこまで長生きする必要もない、むしろ短い生涯を若さを保ったまま生きられるなら、という考えが多数派になっていったのだ。 80歳の誕生日の、その人が生まれた時間きっかりに、死ぬ。 それが死の常識となった。 それが約100年前のこと。 僕は、その約20年後にこの世に生を受けた。 そしてもう1人、僕はその少し前に生を受けた人を知っている。 他でもない、今隣にいる彼女である。
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