朝日が最期を告げる日

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早朝の街を2人で散歩するのは初めてのことだった。 僕が朝が苦手な質なのだ。 なんだか少しむず痒い、付き合いたての高校生みたいな気分になってしまったけど、つらつら他愛ないことを話す彼女につられて、だんだんいつも家で話すような気分になっていった。 齢80直前だが、見た目は20歳ごろのそれとほとんど変わっていない。話題にあわせて表情がころころ変わるところと、綿飴みたいに甘やかでふわりとした笑顔も、その頃から変わらない。 あまりにいつもと変わらないものだから、僕は数瞬今日が「あの日」であることを忘れていた。 そして、それを思い出す度に。 こんな時がもっと続けばよかったのに、という思いが、胸をえぐるような痛みをともなって押し寄せた。 
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