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「結局、神城悠真の行方は解らないままですね…」
ふと思い起こして溜息を吐く健介。
冷めたコーヒーを飲み干すと、貴志は苦々しくそれに答えた。
「神城悠真に協力者がいたとはな。捜索は、また振り出しだ。慎重な奴だから、今度はなかなか尻尾を出さねぇだろうな…」
桐生菖の供述によれば、悠真は、六星一座の護摩によって、魂魄に深刻なダメージを受け、立つ事も難しいほど衰弱していたという。それが事実であれば、瀕死の悠真が単独で逃走するとは到底考えられない。
事実、悠真の部屋には複数の足跡が残されていた。
「誰なんすかね、協力者って…?」
ふと頬杖をついて、健介が呟く。
貴志もまた、同じポーズであらぬ方向を見上げて言った。
「さぁな…。桐生菖は、行方不明になっている鈴掛一門の元幹部じゃねぇかって言っていたが、特定は出来ねぇ。全く…一体あと何人いるんだよ、あいつら?」
「カルト教団“S”の元幹部は、合わせて12人…。その内、表部隊の双璧と言われた九鬼棗は獄死。残る一人、巳美春臣は、改宗して六星一座に帰依しました。残った裏部隊『十人衆』の内、一曜と二曜は京都府警が逮捕。三曜と十曜は死亡が確認されています。」
「四曜と九曜が紅青に従いている事も、六星一座によって既に確認されている。てことは、五、六、七、八のどれかが協力者ってことになるな。単独か複数か──それとも残る全員が、紅青を裏切り、味方についたのか。」
メモ用紙に数字を書いては×印を付けてゆく、貴志。
それを横目に見ながら、健介は言った。
「そう言えば、あれ以来、紅青の動きもありませんね。」
「あぁ。もしかしたら、死んだのかも知れねぇ。」
「そんな事…!」
「六星達の情報によれば、紅青の実年齢は60歳を、ゆうに越えているらしい。何らかの体調不良で死んだとしても、不思議じゃねぇ。」
その言葉に、とうとう健介は腕を拱いて沈思してしまう。
本当にそうだろうか?
紅青が死ぬ?
むしろ、不老不死だと言われた方が得心する。
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