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麗華は、紅青の表情を伺うように覗き見て頷く。
「はい。私と姉が、丹精してこさえましたの。御覧の通り、とても見栄えがよろしいでしょう? これで存外、知能指数も高いのですよ。元々の素材が良かったので、私共も、磨き甲斐がありました。近年稀にみる一品だと自負しております。」
「ふむ…なるほどな。」
微かに首肯すると、魔性の白童子は、アクアマリンの瞳を眇めて、彼女らが創り出した『影』を観察した。
仰々しく献上された、『影』と呼ばれる者──
それは、一見、何処にでもいるような二十代の若い男性であった。霊視したところ、これといって特別な力は無さそうであるが、知能的な問題はなく、顔立ちも整っている。
唯一の違和感は、その者の中身である。
影の青年には、本来あるべき魂魄が無い。心も思考も空っぽで、まるで深海の洞の様に、どこまでも空虚であった。
これに良く似たものを、紅青は知っている。
嘗て稚児に召した《狗神遣い》の少女が、やはり、こうして人を操る術を得意としていた。
「《人形》、か。」
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