子供たちは光を放つ

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 高校三年生になると、彼の周りで、夜、光りを放つ生徒が徐々に少なくなっている。  しかし輝之助(てるのすけ)は、いまだに、『ほたる症』が治らない。そして自分の体を、恥ずかしいと思う気持ちが、一段と強くなっていく。  彼の努力は報われた。輝之助(てるのすけ)は医学部に進学する。医学生は多くの病気について学ぶ。『ほたる症』についても習うが、健康には特に問題はなく、自然に光らなくなることが多い、と教わるだけで、原因も治療法も不明のままだ。  卒業まで輝之助(てるのすけ)は、『ほたる症』の研究を重ねた。しかし、教授の一人は、「放ってもおいても、恐らく問題ないので、別の研究をしたらどうかね」と、素っ気なくアドバイスをした。  医師になった彼は、ある病院で皮膚科医になる。周りの同い年の人で暗闇で、光る体を持つ人は、まずいない。  しかし、彼の体は依然として夜になると光る。夜勤の時も、暗い廊下を歩きながら、光りを放つ輝之助(てるのすけ)。一部の患者からは、先生がいると分かって安心、と言われるが、彼にとって、苦痛が増すだけだ。  病院で診療に終われながら、『ほたる症』の研究を続けたが、全く成果はでなかった。  輝之助(てるのすけ)は、三十台前半を迎えようとしている。彼は夜、できうる限り、出歩かないようにしている。なぜなら夜道を歩くと同じように光っている人は、子供ばかり、そんな光景に耐えられないからだ。  そんなある日、輝之助(てるのすけ)が勤務する病院に、同世代の女性の皮膚科医が転勤してきた。夜、病院近くの居酒屋で、歓迎会が開かれることになった。
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