子供たちは光を放つ

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51a3aac0-a3fd-42f8-b9ce-2cb2ef09e78f  その国では少子化が進んでいた。「このままでは国家の経済が破綻する」と経済人は言った。「国力が落ちる」と熱弁をふるう政治家もいた。子供を増やすには、どうしたら良いのか、多くの有識者がマスコミで意見を述べるが「子供は、かけがえのないもの」と言う、想いを語る人は少ない。    そんな議論が、連日行われるようになったある日のこと、産まれた子供が暗い場所に移動すると、突然光り輝く現象が起きたのだ。  しかも一人だけではなく、その日、産まれた全ての子供にである。国中の病院で検査が行われたが、医師は誰一人として原因を突き止めることはできなかった。  しかも、その日以降も産まれた子供たちは、全員が暗い場所で光り輝くという、不思議な現象は続いたのだ。  それ以前に産まれた子供たちに比べて、暗い場所に移動すると体が光るということ除けば何の違いもない。それ以外には何も分からなかった。  親たちは、暗い場所で光り輝く、我が子を見ながら心配したが、兄や姉と明るい場所では、何も変わらない。政府は、夜になると光りを放つ子供たちの経過観察を行ことに決めた。  医学者たちはその子らに『ほたる症』という仮の病名を与えた。それら一連のできごとは、逆に親たちの不安をいっそう増すだけだった。 ***
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