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乾いた大地に砂塵は吹き荒れ、遠くに霞む旧世代の遺跡達は、失われた時代の墓碑のようにその影をくゆらす。
その昔、ハイウェイと呼ばれたアスファルト質の路面を、土埃を上げて東へ向かっていた1台のホバーバギー。
それが突然急停止したのは、この砂嵐で不鮮明だった視界が、道路の陥落に気づくのを遅れさせたためだった。
運転していたのは、齢にして14の少女である。
栗毛色の長い髪を風の成すままに舞わせながら、ゴーグル越しのまだあどけない瞳で、断裂された道路の下を覗き込む。
眼下に広がる荒れ果てた荒野まで、このまま真っ逆さまに落下していたら、運が良くても大怪我くらいの高さがあった。
少女は大きく胸を撫で下ろした後、改めて土色ばかりの代わり映えのない景色を見回し、ため息と共にシートに身を沈めた。
この道路をそのまま真っ直ぐに行けば、目的の場所まで難なく辿り着ける──
そんな楽観的な自信が、道と一緒に跡形もなく崩れ落ちており、己の浅はかさを地団駄踏んで呪っている。
この大きな道が途切れたとなると、やはり迂回して下を行かねばならず、そうなるとどうしても、ホバーバギーに搭載されたナビゲーションシステムに頼るしかないのだ。
少女はムスッと尖らせた唇で、ハンドルの左にある、若干ひび割れたディスプレイを睨んだ。
もう二度とこんな奴には頼らないと、つい数時間前に息巻いたばかりなのに、こんなにも早く電源を入れることになるなんて、悔しいやら格好悪いやら──
随分と躊躇していた少女だったが、やがて意を決したように、乱暴にナビゲーションのスイッチを叩き押した。
すぐに起動の光を放ったディスプレイに、大きくて真ん丸い2つの目玉が表示される。
その目は、自分を見つめる膨れっ面に気づくやいなや、瞬時に怒りの形に吊り上げられたのだった。
『なんだいマイコ、まだボクに文句があるってのかい?
いいだろう、第2ラウンド開幕といこうじゃないか』
「そうじゃないよ、リド。
なんて言うかさ……その、道が途切れちゃったって言うか……」
『ふぅーん。
で?』
「目的地まで、ナビゲーションして欲しいな……なんて」
『おやおやおやぁ?
おかしいなぁ、マイコはついさっきまで、ボクなんかの力を借りなくても、余裕で到着できるとかなんとか言ってなかったかなぁ?
あれあれあれぇ?』
「もうっ、意地悪しないで導いてよっ!」
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