柏木陽斗の場合 その2

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 陽斗は首を傾げながら、画面に映りだした画像に息を呑んだ。 『ほら、腰を上げな』 『ん、やぁ、舐めちゃ』  艶めかしい嬌声が、テレビから流れる。 「これ」  陽斗は真っ赤になって高木を見る。映像は男女のセックスシーンでは無い。男同士の絡みが、卑猥に繰り広げられていた。 「楽しそうだよな~陽斗ちゃん俺らと楽しもうじゃん? 気持ち良い事したげるからさ~」 「男は初めてだが、こんな可愛きゃありだよな」  高木が充に相槌を打つ。  ーーーな、何この状況!? 「僕、帰る」  陽斗は自分のドクドクと嫌な鼓動を聴きながら、立ち上がって玄関へ急いだ。が、素早く充に右脚を掴まれ、陽斗は盛大に散らかっていた衣類の上に、押し倒された。 「や、やだっ!!」  とっさに仰向けになった陽斗の両腕を、高木が掴み充が陽斗の上に馬乗りになった。 「離せっ! 高木、馬鹿な事すんな!」  陽斗は頭上に見える高木を見た。充が陽斗の上着を脱がそうと、セーターとシャツを捲くり上げた。外気と冷たい掌が、陽斗の白い胸を撫で上げる。 「すげ~しっとりしてて女みてえ」 「早く換われよ」  ぞわぞわと悪寒が背筋を走る。涙が溢れて陽斗は悲鳴を上げた。 「いやあああああっ!」  バキッ!  ドアを何者かが蹴り破り、高木と充はギョッとして玄関へと振り返った。 「な、何だよ!?」 「ぐあっ!?」  充が横へ殴り飛ばされ、高木は胸倉を掴まれて壁に叩き付けられる。  陽斗は重みが無くなると慌てて起き上がり、突然の侵入者に驚愕した。 「ディオ…?」   怒りに吊り上った眼が、冷たく陽斗を捕らえ、陽斗は涙を流しながら震え上がった。 「あ…」  ディオは黙したまま陽斗を抱き上げ、部屋を出る。見れば、高木と充は気を失ったのか、ピクリとも動かなかった。夜の秋空は頗る寒く、寒さにぶるりと震えれば、一度陽斗を下ろして自分の着ていたコートを脱ぎ、陽斗に羽織らせた。 「あ、りがとう」  再び陽斗を抱き上げたディオは、停めていた車に乗せ、発進させる。   静まり返った車内は、ディオの怒りを物語っているようで、陽斗は居心地が悪かった。 「助けてくれてありがとう…そこら辺で降ろしてよ」 「好い加減にしないか」 「…は?」  車を路肩に寄せて、シートベルト外したディが、陽斗を抱き締める。熱く広い胸に抱き締められて、陽斗は困惑した。 「どれだけ心配したと思っているんだ!?」 「そんなの、頼まれて僕を探したんだろう? ほっといてよ、僕なんかっん、んん」  先の言葉は、ディオに唇で奪われた。舌を乱暴に吸い上げられ、噛まれ、嬲られる。息を吸うのに必死で、陽斗は漸く離れたディオの顔を見上げていた。 「な…んで? 奈緒って人が好きなくせに」 「あぁ好きだ」  その言葉に陽斗はずきんと胸を痛めた。  ーーーなんだよ、それ。          「だったら!」 「従兄弟だからだ」 「……」 「従兄弟が好きなのは当たり前だ」  ディオは陽斗の頬を捉え、再び口付ける。今度は優しく撫でるような甘いキス。 「なんで?」 「陽斗…まだ解らないか?」 「解んないよ…」  流れる涙を吸われ、首筋にキスが降り。 「好きだ。陽斗」
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