47人が本棚に入れています
本棚に追加
柏木陽斗の場合 その1
寝ぼけ眼で寝返りを打つと、隣にはすやすやと眠る外国人がひとり。一気に目覚めた家の主は柏木陽斗。今や売れっ子の、弟にしたいナンバーワンのアイドルだ。
「え~と?」
なんでコイツが此処に居る? さて考えた。
恋しい細川製薬会社社長の、細川大樹の恋人高平奈緒の従兄弟。
名前は………何だっけ???
「おはよう」
「そう、おはよう……………………………違う、なんでこっちのベッドにあんたが居るのさ!?」
セミダブルに金髪碧眼のイタリア人。
「寒かったから。因みに『あんた』ではなく、私の名前はディオ・ランバート・ヴィルテアだ」
にっこり微笑のディオ。思わずドキリとしたが、此処は負けてなるものかと、陽斗は隣室を指差した。
「そ、それより! 事務所の社長が頼むからしょうがなく置いてやるが、寝るのは客間を使えと云ったよね!?」
奥二重をパチクリさせて、ディオは肩を竦めた。
「あの部屋は殺風景過ぎる。それよりこの部屋は良いな。子供の頃を思い出す」
陽斗の部屋は子供の頃の思い出が詰まったような部屋だ。
飛行機の模型や車のラジコン。昔流行ったアイドルのポスター。
本棚には漫画がびっしり。
「どうせ子供だと馬鹿にしてんだろ?」
頬を膨らませた陽斗の目許はピンク色だ。
「まさか。私が過ごした部屋も、流石に漫画は無かったが、模型は在ったな」
懐かしそうに碧眼を細めたディオに、陽斗はトクンと胸を鳴らした。
「懐かしいのは解ったけど、だからって人のベッドに入るなよ。心臓に悪いだろ」
布団から出て来ないディオの隣で、陽斗はちょこんと正座をしている。肩から見える白い肌は、彫刻のように綺麗だ。
「そうか、断りもなく悪かった」
残念そうに云いながら、ディオはガバリと布団から出て、固まる陽斗の眼前を横切りドアを開けて振り返った。
「着替えて来るよ」
パタンと閉まるドアを凝視していた陽斗は、絶叫した。
「ギャア~」
はだか! ハダカ! 裸!
最初のコメントを投稿しよう!