終章

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終章

 と、そこへ息急ききって、下働きの女が駆け込んで来ました。 「大変ですよ、旦那様、お嬢様! たった今、お使者の方がおいでになって言われるには、この近くで王子さまが鷹狩りをなさっていたそうなのですが……」 「ご休憩なさりたいから、この館にお立ち寄りになると言うのね」 「あれまぁ、よくおわかりになりましたね」  娘は頭を抱え込んで声にならないうめき声を上げていましたが、いきなり飛び起きると、驚いて止めようとする父親や求婚者や下働きの女を振り切って、表に走り出しました。そして村の教会に飛び込むと、司祭の膝に取りすがって激しく泣きながら、 「わたしは恐ろしい目に遭いました。それでほとほと自分を変えなくてはならないと思いましたのに、その端から、自分の持っている生来の性格が顔を出し、とても自分の力では成し遂げることができそうもありません。あのまま家にいたのでは、様々な誘惑がわたしの心を惑わして、今にとんでもない恐ろしいことが起こって、取り返しのつかない事態になってしまいます」  と訴えて、そのまま尼になってしまいました。  その知らせをほとんど同時に聞いた領主の息子と娘の父親は、同じように「なんと!」と叫びました。  領主の息子の方はガックリと失望した表情で嘆息しましたが、娘の父親は老いたその顔を歓喜の色に輝かせて(ひざまず)くと、 「自分が聖職者になることは叶いませんでしたが、いつかわたしの家系から神に仕える者を出すことを、切に祈って参りました。そしてついに、わたしの夢が叶いました!」  と言って、感謝の祈りを捧げたのでした。         END                       ※最後までお読みいただきありがとうございました。次のページもどうぞ。 
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