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3の章
「どうです? ここがぼくのお城です。ぼくのお嫁さんになってくれたら、このお城はあなたのものになるんですよ」
ネズミが高い声でキィキィ鳴くと、柱の陰から、たくさんのネズミの兵隊たちが出て来て、一列になって整列しました。
「ほら、家来の数だって世界一ですよ」
娘はあまりにたくさんのネズミに、思わず身震いしました。
「食事も不自由はさせませんよ。世界中の宮殿から珍味を持って来ることだってできるし、宝飾品がお望みなら、それこそぼくたちは、世界の王妃さまのドレッサーはおろか、厳重に鍵がかけられた国庫からでも、最高峰の一品を持って帰って来ることだって訳はないんですから」
ネズミは言いながら、じりじりと娘に近づいて来ました。
「だから、ねぇ、お姫様。ぼくと結婚してくださいよ。悪いことは言わないから」
ネズミは舌なめずりをして、長い尻尾をうねうねとくねらせながら、今にも飛び掛かってきそうにしています。娘はおぞましさに吐き気を催し、口を押さえました。
「考えてもご覧なさい。あなたは確かに美しくて、ぼく達ほどではないにしろ、頭も悪くはありませんよ。でもだんだん年を取って、今じゃあのカエルみたいな爺さんしか求婚する者もいないじゃありませんか。それだって、所詮は田舎の、あなたのお父さんとどっこいどっこいの地位の男でしょ。そこへいくと、ぼくはネズミの国の王子で、あなたのお望み通りの地位や財産を授けてあげられるんですよ。ねぇってば、お姫様。聞いてますか?」
娘はとうとう我慢ができずに、大声で叫びながら、手近にあった燭台をつかんで、力いっぱいネズミに投げつけました。燭台の当たったネズミはヂュッ! と悲鳴を上げて、バタリと床に倒れました。
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