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僕は懐中電灯で壁を照らすと、元宮がそうですねと返事をする。
「奥行きましょう」
「あぁ」
促されて、脚許に気を付けながら元宮の後に連いて行く。
遠くで何かが聴こえ、僕と元宮が顔を見合わせる。
壁紙はあちこち剥がれていて、天井からはコードが垂れ下がっていた。
各部屋には、ベッドや家具が残されているけど、カーテンは引き裂かれたみたいになっている。
「…美樹先輩が騒いだんじゃないか?」
「…先輩、でも可笑しいです…声が凄く早く近付いてます!」
「えっ!?」
元宮が慌てて僕の腕を掴み、駆け出した。
元宮の片方の手が、僕の背を押す。
「先輩達じゃないの!?」
振り返った僕は、元宮の頭の向こうに在る、黒い影を見た。
「ひっ!?」
びっくりして僕の脚がもつれ、廊下に倒れる衝撃に耐える為、双眸をギュッと閉じる。
「先輩!」
元宮が僕の頭を庇う為に、自分の胸に抱き込んだ。
ドサッ。
僕は元宮を下にしてしまい、慌てて起き上がろうとしたが、僕は元宮の力強い腕によって、腰を抱えられている。僕は元宮を跨ぐ形で真っ赤になった。
「元宮、ごめん重いだろう? 退くから手を離して…元宮?」
グイッと元宮の右手が、僕の後頭部を掴み、僕の唇を奪う。
「んうっ!?」
全てを奪うようなキスに、僕は涙が浮かぶ双眸を細め、元宮の肩を叩く。
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