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昼間は太陽が燦々と輝き、
夜風は秋の気配を見せ始めた今日この頃。
雨上がりで晴れた夜空には雨の雫で洗われた星たちが、
一段とぴかぴかしている。
ご機嫌で色とりどりに瞬いていた。
夏の星座が覗けるのが残り僅かになってきた穏やかな夜は、
空気に艶があり少し肌寒い。
アタシは海の青色の生地に橙の格子模様の入ったワンピースの上に、
黒のカーディガンを羽織って、
階段下の収納庫の扉に頭を突っ込んでいた。
「衣緒お姉ちゃん、それどーすんの?」
収納庫から出してきた籐の籠を抱えたアタシに妹が首を傾げた。
籠の中にはたくさんの蝋燭が束になって燭台やライターと一緒に仕舞われている。
エメラルドグリーンにタンポポが埋め込まれた蝋燭やサクラの花びらが飾られた蝋燭、背の高いシンプルな赤い蝋燭など多様なものを取りそろえていた。
「それが部屋の電気がさぁ、つかないのよ。電球のストックも切れてるし……だから蝋燭でもつけようかと思って」
「……寝れば?」
「だってさぁ、蛍の光はもう時季終わっちゃったし窓の雪はどんだけ張り切って季節先取り?! ってーか降ってねぇっつうのって感じで蛍雪時代ごっこは無理だしさ」
「……寝れば?」
「携帯のライトだけで本読むのは物凄く侘しくひもじい気分になって部屋の隅でひっそりと中島みゆきとか歌いたくなるから精神衛生上悪いし」
「……お前に寝るという選択肢は無いのか」
半眼で妹はアタシに呆れている。
「いやあ、いのち短し遊べよ乙女ってね。寝ちゃうのは週末の夜なのにもったいない気がしてさぁ」
「乙女でもおかめでも何でもいいけど、携帯電話忘れてるよ。程々にしときなね」
妹は呆れながらも籠を抱えるために一度床に放り出していたアタシの携帯電話を拾って渡してくれた。
それを受け取って妹との立ち話を終えたアタシは、
白いフローリングの階段をぺたぺた裸足で上った。
そのまま開けっ放しの真っ暗な自室に入る。
戸を閉めると真っ暗で何も見えなかった。
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