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「なるほど。精霊院の支援に反対する企業ね」
「工場区一角にある企業らしいのう。必要のない支援だと精霊院に反発していたらしいのじゃ」
経緯をヒマリが説明する。隠れ蓑へと戻り、クシビとヒマリはそこで今回の事件の総括をしていた。
「それで大会が模様される事を知り、そこに反対派の企業が出ると言うから、あの長巫女が一人で乗り込んだというわけじゃ」
「また、すごい度胸だ……」
思い切りがいいと言うか……。義理堅いと言うか……。そこまでするとは……。
だが、あの人の実力ならそれなりの結果を残せたのも不思議じゃない。精霊院の存続は決定したが……。
「まあ、お主が途中で邪魔をしたがの。情報屋専属の術士として出場したのもそのためか」
「裏で何かしら卑怯な事をしていた連中がいないか見張っていたんだ。案の定、数人何かしら怪しいのがいたからな。俺は別に出る必要はなかったんだが、あのままじゃ会長が危なかったからな……」
クシビが言う。案の定、裏で何かしらの贔屓が行われていた。審判も怪しい連中が混じっていた。
「あの人は、それでも無理に出るつもりだっただろうからな……。俺が力づくで帰らせる必要があった。」
「何とも義理堅い娘じゃったな」
会長に話しても聞き入れないし……。
情報屋の手下と思われるのは不愉快だったが、背に腹は代えられない。
「まったく、自分の身の危険も考えてほしいものだが……」
クシビが息を吐く。無茶があるにも程がある。精霊巫女が本職の術士に立ち向かうなど無謀もいい所だ。
それに裏の術士が何をしでかすか分からないというのに。反則だろうが平気で行うような連中だ。真っ当に戦えば命を危険に晒す事にさえなる。
会長ならある程度はまともに戦えただろうが……それ以上は負傷の危険のほうが大きいと判断し、強硬手段を取った。
「その目論見通り、残りの試合は不祥事の発覚で不戦勝に終わったからのう。お主の裏での捜索が功を奏した形じゃな。おぬし、何をしたんじゃ……?」
ニヤリと笑みを浮かべて聞いてくるヒマリ。
「掴んだ証拠で脅しを少々利かせておいた。裏で張っておいて正解だった。やっぱり裏の術士は信用ならないな」
「同業者のお前が言うのも変な話じゃがのう?」
「同業者だから……よくわかるんだよ」
そう言い残すと、クシビは骨董屋を後にするのだった。
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