1227人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「はぁぁぁぁぁぁ………分かった。」
頭を抱えて力なく言う。
「それで…こちらの花村さまは如何致しましょうか?」
「花村…さま?」
「花村 銀市様の…お孫さん?で宜しいのでしょうか?」
と、佐野は後ろを振り返る。
「血は繋がってないよ?間違われるといけないからそう言えと言われてる。養子だよ。だから花村真白と名乗ってる。」
「……そうか。で?その花村が何をしに来たんだ?」
疲れた顔で士郎が聞く。
「じいちゃんに密命を受けて来た。」
「先々代からの…ですか?」
不思議な顔を佐野は向ける。
「はぁぁぁぁぁ…何だ?密命って?そもそも関係ないだろ?密命出すなら、この金庫開けろよ……。」
士郎はポツリと呟いた。
「関係あるんだ。じいちゃんの大事な物が盗まれたそうだ。それを取り返してくる様に言われた。犯人は恐らく、と言うか、ほぼ間違いなくあなただ!」
自信たっぷりと探偵さながらに指を差された。
花村 真白の指は、真っ直ぐに社長である花村 士郎に向かっていた。
「………社長が?」
佐野も士郎の顔を見た。
「は?はぁぁぁぁぁぁ?巫山戯るな!あんな汚たない小屋から盗める物がそもそもあるか?俺もだが、俺が同行させた者も、そんな事をする人間はいない!仮にも老舗、代々続いて来た由緒ある「三代目 銀十郎本舗」の社長と社員だぞ!」
「だけど、あんな山奥にそもそも泥棒は来ない。来たのはあなた達くらいだ。
そして、あなた達が帰ったら無くなったと言うんだから…疑われても仕方なくない?」
「……呆れるね?仮にも親戚だぞ?親戚を泥棒呼ばわりか?あぁ、分かった。何が無くなったんだ?身に覚えはないが探すのに協力する。だからさっさと帰ってくれ!」
「…………。」
真白は無言で停止した。
「……おい!」
「花村さま?」
「申し訳ない…。じいちゃんから何が盗まれたかは聞いてない。」
出て来た言葉に士郎と佐野は茫然と真白を見つめた。
「見つければ分かる、見つかるまで帰って来るなと言われて来た。」
「……嘘だろ?あのじいさん…何を考えてるんだ?」
「…無理難題ですねぇ?」
士郎と佐野はまたお互いの顔を見つめ合った。
最初のコメントを投稿しよう!