猿を飼う

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「お前…どうやって来た?」 もはやため息しか出ない士郎はため息と共に言う。 「じいちゃんからお金をもらって…街で聞いて、飛行機で来たんだけど…駅で新幹線とかいうのにも乗りたくなって…それで往復したらお金がなくなって…その駅で野宿してた。」 「えっ!」 これには佐野が驚いた。 「……脳みそも猿か?」 士郎は呆れたように呟く。 「だ、だって!こんな機会もうないと思うし、初めて乗るし!乗りたいでしょ?すごい早いし!ビューンて…。」 身振り手振りを付けて必死で説明をする。 「子供か…。はぁ……。分かった。お金は使い切ったんだな?」 コクリと頷いた。 「帰りの運賃は出してやる。だから帰れ!な?」 ブンブンと首を振る。 「ない物はないんだ!!」 それを見て思わず強い口調で言う。 「じいちゃんがあると言えばあるんだ!じいちゃんは怖いんだぞ?知らないんでしょ?」 「………………いや…それは分かる気がする。」 強く言い返されてしまったが、士郎はあの日の眼力と声色の恐ろしさを思い出していた。 「社長?暫く置いてあげたらどうでしょう?この子がいたら、先々代も少しは話を聞こうと思いませんかね?この子を送って帰る時に、また金庫の開け方を聞くと言う手もありますし…。」 「……なるほどな?」 士郎はじっと見てから、立ち上がり前に立つ。 「良いだろう。お前、もうすぐ19だと言ったのは嘘じゃないな?」 コクリと頷いた。 「ならば、会社に置いてやる。ひと月、その間に盗まれたという物を探すといい。なければ帰る!その時はお前からも頼んでくれ。この金庫の開け方を!それで良いか?」 「……分かった。それで良い。」 真白もそれに合意した。
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