進化した猿

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朝、目が覚めると与えた部屋に進化した猿がいない。 (逃げたか?帰ったか?……あいつ…金ないだろ?) 慌ててリビングを開けるとソファで音のないテレビを見ながら、パンを食べていた。 膝を包み込み、肘を立ててパンをかじる。 (………やはり、猿。) 「おはよう!」 「………おはようございます。」 挨拶する時は立ち上がり頭を下げるが、また元に戻る。 キッチンでゴソゴソしていても知らない顔だ。 「おい!コーヒー飲むか?入れてやるぞ?」 「結構です。」 「水は?」 「結構です。」 「そのパン……。」 「買って来ました。」 「お前…か、」 「数百円なら持ってます。」 全部言う前に食い気味に答えられた。 「おい!失礼だろ?」 「……社長の条件通りにしています。テレビの音は出してない。静かにしています。社長の生活を乱す事も邪魔もしません。」 「………いや、そうは言ったけど…音は出しても構わない。冷蔵庫も好きに食べていいと…。」 「働かざる者食うべからず…まだ働いてもいないのに人様の冷蔵庫の物を食べる訳にはいきません。」 (猿も礼儀はあったか…。まぁ、あのじいさんと暮らしていたらそうかな?厳しそうなじいさんだったしな?) 「これから働くんだ。腹が減って仕事にならないでは困る。お前には雑用をさせる。だから気にせず好きに食え!俺はケチではない。社長だからな?今日はここで大人しくしてろ。後で生活の色々を教える為に佐野を寄越す。今日中に会社での手続きもさせておく。花村 ましろでいいんだよな?ましろはどんな漢字だ?」 そう話すと、じっと顔を見て笑顔を見せた。 思わずドキリとして焦った。 (…おいおい…落ち着け心臓…俺にその気はない!!ノーマルだ!) と言い聞かせた。 「真実に白い色の真白だ!」 「ほう…真っ白か…。いい名だ。」 また満面の笑顔を向けられ……ズキューンと来る。 「最初は山菜の名前にしようと思ったんだって!こごみ?でもさ、こごみ、こごみ採って来てくれ!って言うとややこしいって思ったらしくて、あ、じいちゃんがね?山に雪が積もって真っ白で綺麗だったらしくて…それで真白。」 ここまで無口な方で、必要以上に話さなかった進化した猿が、名前を聞かれた途端、聞いてもいない由来まで話し始めた。 それも嬉しそうに楽しそうに、キラキラした笑顔で…。 男なのに…可愛すぎて……やばい……ズキューン…だ。
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