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「佐野、悪いな?仕事は大丈夫か?」
寝室から出て来た士郎は佐野に声を掛けた。
「はい、本日は片桐に引き継ぎました。良い機会になるでしょう。いつまでも私が第一秘書とも言えませんし…。」
「まだ、50過ぎじゃないか。定年まで秘書をしてくれ。じゃあ、これ…いや…真白は頼んだ。猿だが悪い子ではない様だ。」
士郎に言われて真白の顔は明るくなる。
それを見てしまうと、士郎も思わず赤くなる。
(お、俺にその気はない!!)
「頼んだぞ!お湯の出し方、洗濯機の使い方は教えた。冷蔵庫もあったらしいが、レンジはないそうだから、教えてくれ。単純と思う事も教えろ?水をかけるなとかな?必要なら金はこれを使ってくれ。カードも真白に使い方を教えてくれ。」
財布からカードを取り出し、佐野に渡した。
「確かに…。お預かり致しました。お帰りまでここにいれば宜しいですか?」
「うん、そうしてくれ。スーツを数着、下着に靴、仕事で恥ずかしくない服装を準備してくれ。普段着も…あれしかない。ジーンズ以外も見繕ってくれ。」
真白を見て顎で格好を指し示した。
(社長が随分と、お優しくなられた気がするなぁ…。)
と、微笑ましく見つめて返事をした。
「畏まりました。お任せ下さい。」
「うん…頼むぞ?では行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
佐野が頭を下げると、真白も佐野の横に立ち、頭を下げた。
「…行ってらっしゃいませ。」
「……うん。真白…余り気を使うな?養子とはいえ、お前は以前、ここの社長だった人の孫だ。親戚だし…堂々と此処へ居てもいいんだからな?忙しくて思う様に事が進まずにイライラしていた。悪かったな。お前もあのじいさんに振り回されている被害者の様なものだ。」
ポンポンと真白の頭を軽く叩いて、士郎は出掛けて行った。
「さて…もう少ししたらデパートへ行きましょう。その前に家電の使い方をお教えしますね。」
「はい!よろしくお願いします。」
元気な返事に佐野は笑顔を向けた。
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