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家に上がるとボロだが意外に綺麗にされていた。
「タイムスリップでもした気分ですねぇ…。」
と、佐野が後ろで呑気に言う。
「電気は通っとる。ガスはないがね?だからテレビは観れる。三代目 銀十郎本舗の社長が変わった事は知っとる。知っとるが……今更だ。随分昔に退いた。今は何の関係もない。」
道案内よりも小さな男の子がお茶を出してくれた。
頭を下げると笑顔を見せる。
(さっきのより可愛いじゃないか……。)
と、思いつつ、聞いてみる。
「二人ともお孫さんですか?」
「いや?一人娘はとうに亡くなった。有名な話だろう?拾ったんだ…と言いたいとこだが、高梨の子供だ。」
「高梨?」
怪訝な顔で見ていると、後ろから耳打ちをされる。
「社長…高梨さんは、先々代に仕えていた有能な第一秘書で……。」
「いや!おかしいだろ?60は超えているはずだ。その子供が……。あ、申し訳ない…。」
視線に気付いて謝ると、目の前の老人は笑う。
「高梨も引退、高梨の息子の子だ。息子の高梨英一は、今はここに住んでいて、仕事で時々居なくなる。私の心配をしているんだろうな?こんな山の中に爺さんが居たら不安なんだろう。息子を用心棒代わりに寄越したんだ。」
「あぁ…なるほど…。」
社長の花村が感心していると、目の前の老人の声色が変わる。
「さて、挨拶は済んだ…。要件は何かな?」
スーツの男達は、それぞれにゴクリと唾を飲み込んだ。
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