猿出没

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「佐野ぉ……。また妙なのを連れ帰って来たな?」 社長の第一声がそれだった。 佐野は焦りながら鞄から一枚の封書を取り出し、前に差し出した。 「先ずはこれを…。高梨 正平様よりお預かりして参りました。番号です。」 「おお!そうか、ご苦労だった!」 「高梨 正平様は本当に現社長の使いで、先々代が番号を教える様に言ったのかとそれは案じておられて、説得に時間が掛かり申し訳ありませんでした。」 「いや…良くやってくれた。で?その…小汚い猿は何処から連れて来た?」 と、社長は後ろにいる者に目を向けた。 「駅からタクシーに乗ろうとしました所、何処からか走り込み、足を捕まれまして……昨日から社長を探しておられたとか…。」 「はぁ?おい、猿!」 猿…と呼ばれて佐野の後ろでプイッと横を向いた。 「お前……猿の癖に私が自ら声を掛けてやっているのに……。」 グルグルと声を出して、睨み合うと佐野が汗をかきながら止める。 「しゃ、社長!それよりも大事なご報告が…。」 「何だ!この猿より大事か!」 「大事です!」 「何だ!」 「この金庫は番号だけでは開かないそうです!!」 「そうか?番号………だけでは…開かない?」 士郎はゆっくり振り返り、佐野の顔を見る。 「……はい。番号は第一関門、中にもう一つ扉があるそうで…。」 「佐野………。」 「…はい。」 「それじゃあ…まだ開かないという事か?」 「……そうなります。しかし、取り敢えず第一関門は開きますから!」 社長はドサリとソファに腰を下ろした。
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