2 初出勤は気苦労の連続

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「タイムカードの場所とかわかる?」 「波岡…主任に事務所に寄るように言われているので、そこで説明あると思うので大丈夫です」 「そ。じゃあ。あとでね」 「はい」 良かった、一人でも頼れそうな人がいて。いや、波岡も頼れるんだけどさ…あいつに頼ると、却って私の立場が悪くなりそうな…。 早くも目の当たりにしてしまった波岡の人気に驚きつつも、波岡に言われた通りに、事務所に立ち寄った。 「準備いいですか?」 「はい」 タイムカードは社員証を一緒になっていて、機械にかざすシステムだ。簡単に事務手続きをしてから。 「あとは挨拶――か。水田さん、こちらに」 そう言って、事務所の奥にどんどん進んでいく。 そこには更衣室で会った宮内さん、それに相馬さん――あと、もっと年配の女性がいた。彼女が、20年この病院にいるっていう黒岩さん、かな。 「おはようございます」 私を後ろに伴って、波岡は声を掛ける。 「おはようございます」 3人一斉に波岡に頭を下げた。 「紹介します。今日からみなさんと一緒に働いていただく水田さんです。偶然にも僕の小学校の同級生で、僕もびっくりしています」 「……」 面接の時から思ってるけど、波岡のこの爽やか好青年ぶりっ子なんなんだろう。…クラス一のやんちゃ坊主だったくせに。 昔を知ってる私からすると、背中がむず痒くなるんだけれど、他のみなさんはそんなことないらしい。 「世間って意外に狭いですよねえ」なんて、宮内さんは普通に相槌打ってる。 ぼんやりと関係ないこと考えていたら、波岡に目で合図されて、慌てて頭を下げた。 「み、水田です。病院の勤務は初めてですので、いろいろ教えてください。根性と体力には自信があります」 宮内さんと黒岩さんは、くすりと笑ってくれたけど、相馬さんだけは笑ってない。まだ一言も交わしてないのに、敵意持たれてる? 「じゃあ、僕は水田さんに、院内を案内してきます」 「主任が行かれなくても…。私が行きましょうか?」 そう言ったのは、黒岩さんだ。普段は、こういう新人の教育は彼女の仕事なのかな。波岡の肩書は管理部人事課主任、らしい。面接の時に見落としていた名札にそう記してあった。 そして私は、パソコンで印刷された研修生のついた名札。この差、大きい…。
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