波岡家のサンタクロース

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「おもちゃ屋と家電量販店はしごするしかないかなあ。瑞月は年明けてからでもいいよ、って言ってくれてるんだけどさ。クリスマス終われば、少し手に入れやすくなりそうでしょ?、って」 だったらプレゼントを変えてくれればいいのに、やりたいゲームがあるらしく、そこは譲れないらしい。将貴がソフトをねだっていて、姉弟間の連携のプレーが小憎らしい。 我が家の長女と長男には、既にサンタクロースの正体はバレてる。まあ、そりゃしょうがないよね。 瑞月は春になったら中学生だもん。大きくなったなあ…って、しみじみ思う。 けど、下二人は、純粋に信じてるのだ、サンタクロースの存在を。 「お姉ちゃんのだけ、あとから届くってなったら、なんか変じゃんね」 同意を求めると、志貴はこっちの苦労も顧みずあははと笑う。 「とりあえず、適当なの用意しておいて、瑞月のプレゼントは進学祝いに回すとか」 「そんなことしてみ。続く3人分の進学祝いも用意しなきゃいけなくなるよ。しかもそれなりに高額の」 「う…」 確かにそうだ、と志貴は口ごもる。 クリスマスまであと1カ月。何としても手に入れないといけないのだ。巷で話題沸騰の新発売のゲーム機を。 「とりあえず俺も、仕事帰りとかに電気屋とか覗くわ」 「お願い。見つけたら買っといて!」 「あと、これ」 私は志貴のLINEにTwitterのアカウントをあれこれ大量に送り付けた。 「何、これ」 「在庫情報教えてくれるアカウント。これで定価販売や抽選販売、見つけたら片っ端から応募して。二人なら当選確率2倍!」 「おま…すげーな」 志貴は若干引き気味。 「手に入らないものって燃えるよね! これは闘いだから!」 こうして波岡家VSおもちゃ屋との戦いの火蓋は切って落とされた。
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