波岡家のサンタクロース

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4人の子どもたちの世話は毎日大変で、終わりが無い業務に思えていたけれど、気が付いたら瑞月が洗濯物を取り込んだり、将貴が買い忘れたものをお使いに行ってくれたり、子どもたちに助けてもらうことも増えてきた。 振り返ってみたらあっという間で、なんだか少しずつ大人になってく子どもたちに寂しさも覚える。 きっといつかはみんな、巣だっていっちゃうんだ。 「寂しいか?」 「うーん、けど嬉しい気持ちもあるから半々かな」 「葉月らしいな」 「志貴も老けたもんね」 「オイ。同い年だろ」 「あはは」 子どもの頃の、サンタクロースを待っていて、なかなか寝付けなかったクリスマスも楽しかったけど、今、こうして自分がサンタになって、プレゼントとワクワクを届けるのも楽しい。 「シャンパン冷やしてあるんだ。ふたりだけでクリスマスしない?」 誘うと志貴はすぐに「いいね」とノってくれた。 チーズとクラッカーがあったから、それをつまみにして、シャンパンを志貴に渡す。 栓を開けた瞬間、炭酸水が溢れて、志貴は慌ててクロスでそれを拭う。 それからグラスに注いで、どちらからともなく杯を近づける。 「メリークリスマス」 サンタは来なくても、大人になっても、やっぱりクリスマスは特別な日だ。
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