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「案内終了。あとはぼちぼち覚えてくれればいいよ」
「うん」
「はい、な。はい。他の人がいるところでは」
「私、あんたみたいに、二重人格じゃないから、ぼろが出ないように頑張る」
「おう」
かつかつと階段を下りる波岡の後ろ姿を追っかけた。
戻ったら、さっそく受付に立たされた。
「いらっしゃ…」
「店じゃないんだから、いらっしゃいはないです。こんにちは、で」
「ありがとうござい…」
「お・だ・い・じ・に。です」
「は、はい」
隣に波岡に立たれて、言葉の使い方から、お辞儀の仕方まで、みっちり指導された。
う、接客業ムズイ。立ち仕事もきつい。
黒岩さんや宮野さんは、カルテの作成や診療報酬の作成があるから、座ってパソコンでお仕事してることが多いけど、私と相馬さんはほぼ受付だ。
保険証を確認して、診察券を持ってるかどうか、持っていなければ、初診かどうかを聞いて、問診票を書いてもらう。すごく難しい仕事ではないけれど、後から後から患者さんは来るし、対応してる間にも、別のことを聞かれたりする。あとどのくらい待たされるのか、とか。
午前中が終わった時点で既にへろへろだった。
「体力には自信あるんですよね?」
相馬さんが初めて声を掛けてきてくれたと思ったら、嫌味で、メンタルもやられそうになる。
波岡が傍にいた時はにこにこしてたくせに。
こんな感じで、全く新しい私の生活はスタートしたのだった…。
多難な予感しかしねえ…。
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