2 初出勤は気苦労の連続

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「案内終了。あとはぼちぼち覚えてくれればいいよ」 「うん」 「はい、な。はい。他の人がいるところでは」 「私、あんたみたいに、二重人格じゃないから、ぼろが出ないように頑張る」 「おう」 かつかつと階段を下りる波岡の後ろ姿を追っかけた。 戻ったら、さっそく受付に立たされた。 「いらっしゃ…」 「店じゃないんだから、いらっしゃいはないです。こんにちは、で」 「ありがとうござい…」 「お・だ・い・じ・に。です」 「は、はい」 隣に波岡に立たれて、言葉の使い方から、お辞儀の仕方まで、みっちり指導された。 う、接客業ムズイ。立ち仕事もきつい。 黒岩さんや宮野さんは、カルテの作成や診療報酬の作成があるから、座ってパソコンでお仕事してることが多いけど、私と相馬さんはほぼ受付だ。 保険証を確認して、診察券を持ってるかどうか、持っていなければ、初診かどうかを聞いて、問診票を書いてもらう。すごく難しい仕事ではないけれど、後から後から患者さんは来るし、対応してる間にも、別のことを聞かれたりする。あとどのくらい待たされるのか、とか。 午前中が終わった時点で既にへろへろだった。 「体力には自信あるんですよね?」 相馬さんが初めて声を掛けてきてくれたと思ったら、嫌味で、メンタルもやられそうになる。 波岡が傍にいた時はにこにこしてたくせに。 こんな感じで、全く新しい私の生活はスタートしたのだった…。 多難な予感しかしねえ…。
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