3 ニセ彼女始動

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病院のすぐ近くの閑静な高級住宅街。その中でも、ひときわ大きく、立派な住宅が真壁だった。一階はカーポートになっていて、車二台が停められている。あの馬みたいなエンブレム…まさかフェラーリかな、違うかな。 外階段を上がって、玄関に。けれど、中庭に既に人が出ていて、インターフォンを押す前に、手招きされた。 今日はお天気もいいし、あったかいから、庭でガーデンパーティー…なんだそうだ。私、パーティーなんて、小学校2年生の時の同じクラスの真由美ちゃんのお誕生日パーティー以来だわ。 「おかえりなさい、志貴。いらっしゃいませ。えっと水田さん…?とおっしゃったかしら」 戸惑い気味に私たちを迎えてくれたのは、志貴のお母さん――かな。ちょっとだけ目元が似てる。 「葉月、紹介する。俺の母さん。えっと、こちらは水田葉月さん」 「は、初めまして…」 「こんにちは。水田さん。なんとなくお名前は憶えがある気がするのよ。志貴の同級生だったんですってね」 「あ、はい…」 どうぞこちらへ、と中庭の中央に案内される。緑鮮やかな芝の上に、白い長いテーブルと椅子が並べられ、その上には可愛らしいランチョンマットと食器が準備されている。これから料理を運ぶところらしく、大きなオードブルのお皿を持って現れたのは、院長だった。 「こんにちは」 「やあ。水田さん、いらっしゃい」 白衣でもネクタイでもなく、セーターにチノパンツという院長の出で立ち。ちょっと不思議な感じ。 そして、瓶のビールを何本も抱えた真壁先生が院長先生の後ろから顔を出した 「あー、やっぱりあんたか。志貴が連れてくる女って」 私の顔を見るなり、真壁先生は面白くなさそうにつぶやいた。この人のこの失礼な物言いは何とかならないのかな。いや、私も決して礼儀作法正しい方じゃないけどさ。 「…ビールお持ちしますか?」 両手ふさがってる真壁先生に気を使って言ってみる。 「いい。手出されると、却って落としそう」 あー、そうですか。こっちも言ってみただけなんで。 やっぱりこの人好きになれない。 波岡と一緒にお母さんのお手伝いをして、料理があらかた並べ終わった頃、もう一組のご家族が来た。 「こんにちは。今日はお招きありがとうございます」 現れたのは、副院長の服部先生のご一家だった。先生と、奥様らしい上品な女の人。その後ろから登場したのは、これまた綺麗な女の人だった。
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