3 ニセ彼女始動

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「なんで…」 「だって、出来すぎじゃない? 面接で、小学校時代の同級生に会いました、採用しました、付き合いました…って。どこまで仕込みか、疑うレベルだよ。おまけにあいつ、芽衣子と結婚するの嫌がってたし」 理路整然と胡散臭さを指摘されれば、まさに返す言葉がない。 寧ろ「ですよねえ」と同意したいくらいだ。出来ないけど。 「そう言われても、本当に偶然の再会で…」 「ふーん。コクったのはどっち?」 「な、波岡です」 「付き合いだしてどれくらい?」 「ま、まだ1週間…」 この辺りは波岡の設定通りに答える。 なのに真壁先生は納得してくれないのか、なおも私との距離を詰めてきた。 「あいつと付き合ってて楽しい?」 「楽しい、です…」 顔、近い。息がかかりそう。 身を捩って、掴まれた腕を放そうとしたのに。 「もうセックスした?」 卑猥な言葉を耳元で囁かれて、背中にぞわっと悪寒が走った。 「そ、そんなこと話す義務はないと思いますけど!」 「あはは、まだなんだ」 「兄さん!」 真壁先生の高笑いに、波岡の切羽詰まった声が被る。 「葉月、何やってんだ…」 「ご、ごめん、お手洗いの場所、見つからなくて」 波岡は私を庇うように、私と真壁先生の間に立った。 「ちょっといろいろ質問してただけだって。んな怖い顔すんな」 「…聞きたいことがあるなら、葉月ではなく僕にどうぞ」 気色ばんでたのも束の間、波岡はすぐに取り繕ったすまし顔の、いつもの仮面をかぶる。 「ああ、そう? 真面目に答えてくれんの? セックスした? って聞いてたんだよ」 「またゲスな質問を…」 呆れたように波岡は言って、質問に取り合わない態を見せる。 「してねえか」 「黙秘権です。いくら身内でも、プライバシーはありますから」 「答えねえのは、出来ねぇからだろ?」 一瞬また波岡の纏う空気が、びりっと張りつめたものになった――気がした。 「その子、お前が用意したニセモノだから」 「……」 取り合っていられない、と言いたげに、波岡は大きく息を吐き出してから、私の肩を自分の胸元に抱き込んだ。 「1ミリも動くなよ」
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