プロローグ

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波岡は1年の時から同じクラスで、よく気が合った。上に二人も兄がいるせいか、私は男まさりのやんちゃな性格で、女の子とおしゃべりをしたり、絵を描いたりしてるよりも、男子に混じって、ドッジボールしたり、校庭で駆け回ってる方が好きだった。 大体私を誘いに来るのが、波岡だ。 クラスのリーダー的存在で、頭もいいし、スポーツも万能。絵が致命的にへたくそだけど、それでさえ、クラスに笑いをもたらす格好のネタとしてしまう。 あいつを嫌いな奴なんて、クラスに…ううん、この世界にいないんじゃないかな、なんて思えちゃうくらい、みんなから愛されてる。 だから、そんな波岡が私を好き、って言われたら――悪い気はしない。いやもっと積極的に――嬉しい。 「え、それってどこから出た情報?」 「この間、隣のクラスの子が、波岡にコクって振られたみたいで」 「ゆ、勇気ある」 「その時に波岡が、『ごめん、俺、好きな子いる』って言ったもんだから、誰だ、それは、って、2組で噂になって、葉月が一番波岡と仲がいいじゃん?」 「そ、そうかな」 「そうだよ。だって、名前呼びするの葉月だけじゃん」 波岡が私を? ――そうかなあ、そう、だったらいいなあ…。 南ちゃんの話を聞いて以来、波岡を意識するようになってしまった。 波岡と目が合うだけで、どきどきしちゃったり、他の女の子は誘わないのに、私にだけ学校終わった後で、遊ぶ約束してくれると、舞い上がってた。 「葉月ちゃん、波岡くんと仲良くていいなあ」 と気軽に喋れない女の子から、やっかまれて、ちょっと得意になってたとこもあった。 今にして思えば単純で、恋に恋してただけ。 だから――あの日のことは、罰が当たったのかもしれない。
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