3 ニセ彼女始動

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私は芽衣子さんに引っ張られるように中庭の外れに来た。くすんだ緑色の木が壁の代わりをなすように、一面を覆っている。 「葉月さん、この木なんだかお分かりになる?」 「え」 名前に反して、草木のことにはとんと疎い私。単に八月生まれだから、葉月って名前なだけで、両親も園芸大好きってわけじゃない。 首を傾げると、芽衣子さんはにっこり笑って答えた。 「金木犀。今はもう散っちゃったけど、毎年オレンジの鮮やかな花が咲くの。私、それを見に来るの楽しみで」 無邪気に言うけど、つまり、それだけこの家にも詳しいし、波岡との絆も深いんだと、言われてるように思えるのは私の穿ちすぎた意見だろうか…。 今日いろいろありすぎて、人を素直に信じられなくなってる。早く帰りたい。その前に波岡に言わなきゃいけないことがあるけど。 「金木犀の花言葉ご存じ?」 「いえ…」 いやだから、私は花言葉に詳しい女子力高めの女じゃないんです、お嬢様。 「真実。高貴な人、謙虚――あとね、こんなのもあるの――初恋」
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