3 ニセ彼女始動

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この間、院長の家にお邪魔して以来、私と波岡が付き合ってる…っていう話は、瞬く間に病院内に広まってた。 芽衣子さんにも、偶然病棟の中で会ってしまった。同じ病棟の小児科医だったって、全く知らなかったから、「あら、葉月ちゃん」って声を掛けられて、心臓止まりそうになった。 芽衣子さんは波岡が、波岡は芽衣子さんが話してたと思ってた、って言ってたけど、そういうことはちゃんと知らせてほしい…。 もともと私にそっけなかった相馬さんは、更に態度が冷たくなった。 「幼馴染だからって後から割り込んできたくせにずるい」 相馬さんが、更衣室で宮内さんに文句を言ってるところに、たまたま入っていってしまった。 名前こそ出してなかったけど、私と波岡の話題なのは、明白で、相馬さんは「私、諦めませんから」と威勢のいい啖呵切って、さっさと着替えて出て行ってしまう。 「…若いっていいなあ…」 相馬さんの後ろ姿を見送って、宮内さんは茶化すように呟いた。 「すみません」 「水田さんが謝ること?」 「入って間もないのに、仕事を覚えるより早くこんな…」 それは昼間、黒岩さんにも釘を刺されたことだった。 「恋愛もいいけど、仕事はきっちりやってね」 波岡はちゃんと実績も実力もある。だから、面と向かって彼に何か言う人は少ないんだろう。大体こういうのの矛先は、言いやすい方に向けられるから。 「あはは、水田さん、やるなあ、とは思ったけど。恋愛なんてしょうがないっしょ。転がるときは転がるし、動かないときは何年待ったって、1ミリだって動かない」 「…そうですけど…」 「ねえ、すぐに帰らないといけない人?」 「いえ。一人暮らしですし、急ぐ理由はないです」 「じゃあ、ちょっと付き合ってよ」 宮内さんは病院近くの食堂に私を引っ張ってった。
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