2 初出勤は気苦労の連続

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2 初出勤は気苦労の連続

真壁病院――病床数274。内科、小児科、呼吸器科、循環器内科、外科、整形外科…と備える総合病院。当然、働くスタッフの数も多い。 今日からここで、働くのか。 白をベースにした建物は8階建て。正面から全容を見上げてから、波岡に教えてもらった通用口に回った。警備さんに言われた通りに、名前を書く。社員証などを持っていないから、警備さんが事務所に連絡をして、1分もしないうちに波岡がやってきた。 「おはようございます。水田さん、こちらへどうぞ」 丁寧すぎるあいさつと、さわやかな笑顔で、私を迎えると、波岡は私を誘導して、病院の内部に入った。一歩入っただけで病院特有の消毒液の匂いが、鼻を掠めた。 「これ、制服。サイズは言われた通り9号にしたけど、小さかったり大きかったら言って。割とゆったりめに作ってあるから、大きいって言われること多いんだ」 紙袋を手渡され、中を覗き見ると、紺のスカートとベスト、白いブラウスが入っていた。 「ありがとうございます」 「着替えはそこが女子更衣室。ロッカーも作ってあるはず。水田、ってプレートあるところに、鍵もささっています。そこを使って。着替え終わったら、俺はあそこにいるから、声を掛けてください。タイムカードとか説明するので」 「…わかりました」 ロッカーの中に入ると、4人の女性が着替えていた。 一人は白衣から私服に着替えてるから、当直の医師か看護師かな。もう一人は白衣を羽織っただけで、ぷいっと出て行ってしまった。 更衣室は間口が狭くて、奥に長い。真ん中が通路になっていて、両脇の壁に沿ってロッカーが設置されている。水田のプレートは、左側の壁の奥から2番目にあった。 「お、おはようございます」 私と同じ紺のベストとスカートに身を包んでいる人に声を掛けながら、奥に進む。一人の私より若く見える子は、目が合って、軽く会釈だけすると、ランチトートサイズの小さなバッグを手に、出て行ってしまった。 「おはよう。あなた――今日から入るって人?」 代わりに優しく微笑んでくれたのが、私より年上に見える女性だ。パーマが緩くかかった髪を後ろで括って、地味な紺の制服だけど、目鼻立ちがはっきりした綺麗な人だから、華やかに見える。 「あ、はい。水田って言います」 「私は宮内朱莉(みやうちあかり)。さっき出て行った子は、相馬さん。私も彼女も、同じ受付で働く事務だから、よろしくね」 「はい。よろしくお願いします」 「今日が初出勤?」 「そうです」 宮内さんは明るく面倒見がいい人みたいで、いろいろ教えてくれた。事務には、あとこの病院に20年近く勤めている黒岩さんて、女性がいることと、あと若い薬剤師さんと受付の女の子――さっきの相馬さんとかは、みんな波岡のファンだとか。 「あなた、波岡主任の小学校の同級生なんでしょ? 相馬さんなんて、昨日からピリピリしてるの。あの子、ガチで波岡さんに憧れてるから」 …さっきのよそよそしさは、勘違いじゃなかったのか…。
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