ありがとう、さよなら。

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『なぁ、醤油なんかコンビニでも売ってると思うけど?』 軽やかな足取りで前を歩く女がくるりとこっちを振り返る。 『だめ!スーパー行けば安い! 労力を惜しむな若造が!』 『……ばばくさ。』 『あ?も、いっぺん言ってみ?』 嘘だ。 今年で24歳の帆波(ほなみ) 一度も染めたことのないまっすぐな黒髪 背も154センチとチビで 良く食べる癖に太らない華奢な体型。 胸もなければ尻もない。 見た目なら全然、学生で通る。 『………27円のお釣りと、レシートでーす。』 『はーい、どうも~。』 醤油のボトル一個が入ったビニールを持って 俺達はスーパーを出た。 『あー、日が短くなったねぇ……』 夕陽を手で遮りながら、独り言みたいに言った。 『気温は全然夏とかわんねぇけどな。』 帆波の腕から袋を取り上げると、ちょっと驚いたような顔をしてから、ニマニマと。そして 『やーん。(たすく)も随分男の子らしくなったねぇ。偉い偉い。』 『…………………。』 変わらない子供扱い。 『ね。ちょっと遠回り、してこ。』 『あ?そんな暇は……って、おい!』 ずんずんと先に進んでいく。 勝手な女だ。
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