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何で・・・?
これは、一体どーいう事?
現実では虐めていた側と、虐められていた側が逆だった。
「苦しい?」
冷たい目をしたまま、私を見つめる篠田杏子はそう言って笑みを浮かべていた。
何故、という思いと、これは現実ではないと確信していた私は彼女を睨み付けてやった。
「てめぇ、マジで何杏子を睨んでんの。」
「生意気なんだよ、お前!」
和佳子と、栞菜の容赦ない暴力が始まる。
腹部を蹴られて、顔面をビンタされ、その場に疼くまる。
途中で入ってきた生徒も見て見ぬふり。
何で?
誰も助けてくれないの?
苦しい。
肺に水が入り込む。
少しずつ、意識が朦朧としてくる。
なんで、私が・・・。
こんなの違う。
虐められていたのは、私じゃない!!
薄れゆく意識の中で、私は過去の出来事を思い出していた。
篠田杏子を虐めるキッカケはほんの些細なことだった気がする。
私はその土地では有名な、所謂名家だった。
私立のお嬢様学校、勿論うちから膨大な寄付をしていた。
だから、正直やりたい放題だった。
同級生も、先生でさえ皆が私に媚びへつらった。それは、笑っちゃう程。
けれども、それはそれで退屈でしかなかった。
単調な授業、ありきたりな会話。
何か面白い事はないかと、教室を見渡す。
そこで目に映ったのが篠田杏子だった。
彼女は友達がいない。
いつも一人。
休憩の時間にはいつも机で何かノートに書き込んでいる。
人の声さえ耳に入らない、いや、そもそも周りなんて気にしていない、見えていないんじゃないかとさえ思われた。
私は静かに自分の席を立ち、彼女の前に立った。
「篠田さん、何書いてるの?」
私は笑顔で話しかけた。
大抵のクラスメイトは、私を怒らせまいと作られた笑顔で当たり障りない会話を返す。
この女も同じだろう。そう思っていたのに・・・。
「・・・貴方には関係のない物よ。」
それだけ言うと、彼女はまた書き物に集中する。
こちらを一度も見ずに。
私が聞いてあげてるの、貴方みたいな一人ぼっちの地味な女に声をかけてあげたのよ、それなのに関係ない?
関係なくなどないわ。
貴方は私の怒りを買ったんだから。
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