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そんなばかな。
「あなたは罪のない人を死に至らしめ、その先の未来を奪った。その罪は重く、あなたが死んだ今も消えない。被害者の想いが強い程、それは重くのし掛かる。あなたはこれから、終わることなく彼女の人生を繰り返すのよ。」
「・・・・。それは、一体。」
「私がこの部屋から出るとそれは始まる。綾瀬愛菜さんが生まれてから、苦労し、悩み、そこから這い上がり、これから楽しみにしていた未来をあなたに潰された。あなたは、あなた自身に殺される。それを何度も繰り返すのよ。」
まるで、昔見た映画みたいだ。
さっき見てきた彼女の人生を何度も、何度も・・・生まれてから死ぬまでを繰り返す。
終わることない悪夢が、現実のものとなりのし掛かるのだ。
「た、助けてくれ。何でもする!」
あんな辛く悲しい想いをするのは嫌だ。
それを何度も繰り返すなんて、まるで地獄じゃないか。
俺の考えていることを察したかの様に、目の前の女は口を歪めて笑った。
その顔に心底恐怖した。
「では、私はこれで。」
背を向けた女のマントを掴もうとしたが、その手は空回りしてその場に転がった。
「無理ですよ、私は人ならざるモノ。あなたには触れられませんよ。自分の犯した罪の重さを受け止め永遠に反省しなさい。」
「まって、まってくれ、お願いだから」
何とか引き留めようとする俺に対し、女は冷たい視線を向けた。
「相田修一さん、地獄へようこそ。」
その一言と共に女は消えた。
言葉通り、煙のように。
嗚呼・・・・やめてくれ、また、また・・・俺は綾瀬愛菜に戻ってゆく・・・。
終わることない悪夢が幕を開けた。
相田修一/完
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