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金木犀が咲く頃
吹く風が透明度と鋭さを増す今日この頃
無意識のうちに背を丸め
下を向いて歩いている
そんなことなどお構い無しに
ヒヤリと私を撫でていく
私が何をしたと言うのだ
身を守るように更に体を縮め
目立たぬように見つからぬように歩く
ふと突き刺さる風の中に
甘くどこか懐かしい香りがして
思わず顔をあげた
香りをたどるように進むと
オレンジ色の小さな花達を見つけた
近づけば香りも濃く鮮明になる
もうこの季節が来たのか
花を見上げる私は知らないうちに
背筋を伸ばし笑みを浮かべていた
吹き抜ける風は冷たさを増すばかりだが
私はもううつむかない
2020/09/29
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