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それぞれのValentineday1
「先輩、好きです!よかったらこれもらってください!」
今日は2月14日。
女の子達が勇気を出して一歩踏み出す日。
例に漏れず、私も朝練終わりの先輩を捕まえて、悪戦苦闘しながら作ったチョコレートを差し出した。
「…ごめん。気持ちは嬉しいけどそれは受け取れない。」
やっぱりだめか…。
申し訳なさそうに頭を掻く先輩を見ながら、わたしが思ったのはそれだった。
「やっぱりそうですよね。突然すいませんでした。そろそろHR始まりますね。すいません、私先に戻ります!これからも後輩としてよろしくお願いしますね!」
「あ、あぁ…。」
私は捲し立てるように言うだけ言って先輩に背を向ける。
ふと思い直して振り返ると先輩は不思議そうな顔をしていた。
「薫先輩からチョコもらえるといいですね!先輩も早く戻らないとHRに遅れますよ?」
「なっ!?」
真っ赤に染まった先輩の顔を見て、今度こそその場を去った。
最初からわかってた。
だって、ずっと見てたから。
でも、そんな先輩が見つめる先にはいつも薫先輩がいた。
受け取ってもらえないことはわかっていたけど、やっぱりはっきり断られるのは辛いな。
手元に残ったチョコを握りしめながら教室に向かう。
知らず知らず目線は足元をむく。
ドンッ!
何かにぶつかった拍子にポロッと一粒
涙がこぼれた。
2021/2/14
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