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「あの、カイ…」
「何?」
「教えてもらってもいいですか、真田九勇士のこと…」
「甚八からは何も聞いてない?
いいよ、僕達の何が知りたいの?」
「ええと、これから一緒に生活していく人達なので、どんな方々なのか知りたいなと思って。
あっ!もちろん、私はまだ疑われている身なので、話せることで結構です!」
「ふふ、大丈夫だよ。
君が本当に徳川軍の刺客なら、ずっとこの屋敷に閉じ込めておけばいいだけのこと。
でも僕達は君が本物の予言者だと信じているから、そんなことにはならない。
つまり君が何を聞いたとしても、問題ないってことだよ」
ーーーそっか…。
私の疑いが晴れても、そうじゃなくても
この上田城から出ることはない、ってことか…。
伊咲はしゅんと顔を落としたが、カイはニコニコと微笑んだまま話を始めた。
「真田家は、現当主の昌幸様、嫡男の信幸様、そして戦で指揮を取る次男の幸村様を中心とした国衆の一つ。
国衆っていうのは大名ほどの規模や権力を持たないけれど、その土地を代々まとめ上げてきた一族って位置かな。
真田家には代々仕えている人達がいるけれど、
僕達は家や土地絡みではなく
あくまで幸村様にそれぞれ見出され、呼び集められた者達なんだ」
「それが、真田九勇士ーーー」
伊咲が言うと、カイはこくりと頷いた。
「そう。僕達真田九勇士は、真田家ではなく幸村様のために戦う。
戦い方はそれぞれ役割があって、異なるけどね」
「甚八さんは、参謀役なんですよね?」
「へぇ、甚八がそう言ってたの?」
「はい、ついさっき。
私が無理やり聞き出してしまったような形なんですけど…」
「そうなんだ。
甚八が言った通り、彼は主に、戦略を幸村様と共に考える参謀役だよ。
あと、小助って男…誰かに似てるでしょう?」
「はい、幸村様に似ているなって思いました!
…性格は正反対な気がしたけど…」
「彼は幸村様の影武者として、どこでも行動を共にするのが役割なんだ。
だから幸村様の戦場や遠征の際には、必ず彼もついて行くよ」
「なるほど…」
確かに、この時代の大名は影武者を何人か雇っていると聞いたことがある。
容姿が似ている人を探し出して…
最悪、影武者が犠牲になって殺されることもあるって…。
「清海は屈強な身体の持ち主で、一人で敵を何人もなぎ倒して行くんだ。
普段は僧侶のような格好をして穏やかそうにしているけど、
戦場に出れば先発隊として誰よりも多くの敵兵を討つ豪傑だよ」
「そうなんですね!
清海さんは、昨日会った時から優しそうな方だなって思っていましたが、
戦いではそんなにお強い男性だったんですね!」
「その清海といつも一緒にいるのが鎌之助。
女好きで適当な感じの男だけど、
火縄銃を使うのが上手くて、幸村様に見出されたんだ。
元々は織田信長の配下に居たそうなんだけど」
「えっ、織田信長…」
そうか。
今は1585年ーーー本能寺の変が起きたのが1582年だから、
この世界での織田信長は、3年前に亡くなってしまっているのか…。
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