真田心中

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「…」 甚八はすぐにその手を離したが、 伊咲はそれに気づくことなく眠り込んでいた。 彼女がずっとそこで座っているうちに眠ってしまったということは なんとなく察しがついた。 そして自分が布団の上に寝かされていることと、 隣にお梅の姿が無くなっていることが分かった甚八は、 ーーー自分だけ、助かってしまったのか… そう、心の中で呟いた。 「ちょっと伊咲! アンタなかなか交代に呼びに来ないから、 せっかく朝方まで起きてたのに寝ちゃってたわよぉ…」 その時、六花が文句を言いながら部屋の戸を開ける音が聞こえた。 「ーーーあら?! 甚八、意識が戻っていたのね!」 「…ご迷惑をおかけしました…」 甚八が謝りながら身体を起こそうとすると、 六花は慌てて彼を止めた。 「ちょっ、まだ起き上がらない方がいいわよ! カイの解毒剤の副作用で、あなた一晩中眠っていたんだから」 「…カイの解毒剤…」 彼は毒を作ることができるのを知っているが、解毒薬も作っていたのか? 「そう!カイがこの城に来てから独自に研究して作った薬らしいわ! さすがカイよね、私は村で教わった技術しか取り柄がないのに」 「…カイはどこに?」 「ああ、交代で甚八のこと見守っていたから カイや他の十勇士なら部屋で休んでいる頃よ。 私は伊咲の次のはずだったんだけどーーー あーあ、やっぱりこの人、寝落ちしてたのね!」
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