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「…あの時、俺の口の中にはほとんど毒が残っていませんでした。
あなたは初めから、自分一人で全ての毒を喰らうつもりでいたのではないですか…?」
甚八がそう呟いた時ーーー
「甚八!良かった、目を覚ましたと聞いてきたよ」
六花に連れられ、カイが部屋に入って来た。
「カイ…。
解毒をしてくれたと聞きました。
ありがとう」
甚八が礼を伝えると、カイは笑顔で言葉を返した。
「助かって良かったよ、本当に。
俺の解毒剤の効果を確認できたし…。
それにーーー君まで死んでしまっていたら
二人が心中した原因を知ることができなかったから」
「…!」
ぞくり、と甚八の背中が栗立った。
カイは、俺の命が助かったことよりも
解毒剤の効果が確かめられたことを
喜んでいるらしいーーー
「ねぇー甚八!
ほんっとにカイにはお礼してもし足りないくらいなんだからね?!
この恩は、ちゃんと生きて真田の為に働くことで返しなさいよねっ!」
六花は冗談まじりに激励のつもりで声をかけたが、
甚八は何やら考え込むように項垂れてしまった。
「…ちょっと、甚八…?」
「ーーーお梅様のいなくなった真田に、
守る価値なんてない…」
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