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甚八が何も言えず口をつぐんでいると、
代わりに六花がカイをポコポコと叩いた。
「やめてよカイ!
甚八は愛する人を失って、今とても悲しんでいるのよ?
こんな時にお説教されたら、甚八がかわいそう!」
「僕は説教じゃなくて、主従の仕組みについて説明しただけだよ。
説教臭く感じたなら、ごめんね?」
カイはニコッといつものように笑ってみせた。
ーーーそれから間もなく、厨房から食事を取ってきた伊咲や
他の十勇士が集まってきた。
「いやあ、なんというか…。
甚八だけでも助かって、まだ救われたよ」
「甚八がいなければ戦の段取りが立てられないものな」
「真田に根津甚八あり、だな!」
十勇士は口々に甚八を激励した。
「…まあ事実、甚八がいなくなったら
真田の兵は烏合の衆と同じだからな。
元が国衆の寄せ集まりだから、統率力もあったもんじゃないし」
珍しく小助までもが、甚八を持ち上げるようなことを言ってみせた。
「良かったね、甚八。
みんな甚八のことが好きだから、心配していたんだよ」
カイは皆の言葉を受けてそう声をかけたが、
先ほどのカイとのやり取りを経ている甚八は
彼自身はそのようなことは思っていないことがすぐに感じ取れた。
甚八が辟易していると、伊咲が遠慮がちに
盆に乗った食事を勧めてきた。
「甚八さんのお口に合うか分からないのですが、
お粥や味噌汁など、消化の良さそうな物を作ってきました」
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