真田心中

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カイに言われるまま、伊咲はカイの自室へ入って行った。 「…カイ。私やっぱり、あの心中の原因は…」 「二人が死ぬと決めたのは、二人の問題。 伊咲が気に病む必要なんてない」 カイは優しく伊咲の肩を抱いた。 「伊咲は人の感情まで背負い過ぎだよ。 君は自分のすべき仕事として、予言という役割を果たしただけなのだから 堂々としていればいいんだよ」 「でも…お梅様が亡くなったことで、 幸村様もお菊様も悲しむだろうし、 甚八さんだってーーー」 「甚八の心中未遂なんて、それこそ伊咲とは無関係でしょ」 「えっ…」 いつもよりも鋭い声でそう告げたカイに、伊咲はぞくっと背中を震わせた。 「そんなことより。 伊咲の手料理を初めて食べる十勇士が 僕じゃなかったことに妬けちゃうな」 次の瞬間にはにっこりと微笑んでいたカイだったが、 甚八の自殺未遂を『そんなこと』で済ませた様子から カイが甚八の話をしたがっていないことを伊咲は感じ取った。 「そ…だね。作ったことなかったよね」 「僕にも料理を作ってくれる?」 「ーーーもちろん」 伊咲が頷くと、カイは嬉しそうに伊咲を抱きしめた。 「良かった!楽しみだなあ」 …カイは… 茶道を教えてくれて良くしてくれたお梅さんの死や、 一緒にこれまで戦ってきた甚八さんの自殺未遂の直後でも こんな風に頭を切り替えて笑っていられるんだな… 私には、よく分からないーーー
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